こんにちは、マーケターのムロヤ(@rmuroya)です。
過去に、私が運営するウェブメディア「リマンべ」にて、数日で6万PVを達し、fbいいねの獲得は2000超、はてブは200ほどに達したバズが起きた記事があります。
それがこの記事です。
東京理科大がある長万部町、18歳選挙権の影響が凄まじいと話題に
日本テレビ「NEWS ZERO」では、嵐・桜井翔さんによる「イチメン!」のコーナーでリマンベから話題になった18歳選挙権の件について取り上げていただきました。
http://www.ntv.co.jp/zero/ichimen/2016/07/18-2.html
NewsPicksでは有名Pickerの方々にたくさん紹介いただきました。
https://newspicks.com/news/1623320/
さらに、数年後に日本テレビ「B面政治家」にもこの話題が取り上げられ、各所に波及していきました。
http://www.imagine-inc.co.jp/works/2435/
SNSでのバズについて、コンテンツの作り方と届け方は、初めの段階でセットで考える必要があります。
この時は、どのような狙いがあったかと解説してみたいと思います。
デジタルPRの5つのポイント
SNSでバズに成功することで、大量の良質な被リンクも獲得でき、それ以降、「長万部」に関する様々なキーワードで上位表示できるようになりました。
バズの方法として、拡散したくなるような「WOW」のあるネタをつくるのはもちろんですが、SNS時代の効果的な情報発信は、効果的な情報伝搬であると考えています。以下の5つのポイントを紹介します。
1. 徹底的にタイトルとアイキャッチにこだわる
当たり前すぎて何の新鮮味もないTIPSですが、SNSで拡散するかどうかは、「タイトル」と「アイキャッチ」で9割決まります。
当たり前すぎることですが、ここにちゃんと思考のリソースを取らないと、取材で何時間かかろうが制作に何時間かかろうが、全て徒労に終わります。当たり前の徹底こそ、最重要な取り組みです。
この記事のタイトルには、パワーワードである「長万部」「理科大」「18歳選挙権」「話題」を入れ、すごい感を演出するようにしたのがポイントです。
タイトル「東京理科大がある長万部町、18歳選挙権の影響が凄まじいと話題に」
「長万部」「理科大」のワードを含めることで、関係する属性の人の反応率が高まり、
「18歳選挙権」のワードを含めることで、政治や大きな社会変化に関心のある層からの反応率が高まり、
「話題」のワードを含めることで、ネットウォッチャーの方々や、ネットで話題になっているトピックそれ自体を探している方の目に留まりやすくなります。
アイキャッチについては、リマンベのメンバーが撮影した「理科大生のチャックシャツデー(※上智大学は浴衣)」の写真を選定して、理科大生が多い感を出して、「なんでチェックシャツを着てるの?」というツッコミも狙いました。
このタイトルとアイキャッチは、SNSでの最初の接点なので、ここが外れると拡散のファネルの上部が台無しになるようなものです。
思考のリソースの50%は使ってもいいくらい重要なファクターですので、徹底的にこだわりぬきました。
2. 世論の時流を読んでコンテンツを投下する
「18歳選挙権」というテーマであったため、このテーマに関してメディアの注目が集まりそうな、参院選の投票日である2016年7月10日に近い日に投稿しました。口コミが発生しやすいように、そのテーマについてお口が馴染んできた頃合いを図りました。
3. 拡散の重要クラスターにリーチする
若者の政治参画をテーマに活動するNPO法人YouthCreateの代表・ハラケンさんに拡散していただき、この記事の重要クラスターである政治クラスターへのリーチに成功させました。
重要クラスターにリーチできることで、ターゲットセグメント(=政治クラスター)で「ブレイク」しやすくなります。
以前、バズについて調べているなかで、「ブランド再生のプロ」とも呼ばれている高級腕時計HUBLOT(ウブロ)の元代表取締役の高倉豊さん、そして某動画サイトの人と思われるかわんごさんには、バズに関する共通の思考があることに気づいたので紹介しておきます。口コミの構造の理解がすこぶる捗ります。
高級腕時計HUBLOT(ウブロ)の元代表取締役の高倉豊さん
高倉 自分では、コップで例えると、一番わかり易いと思って書きました。コップというのは、ビジネスで言うところ、マーケットですね。年齢や性別、使う用途など様々な切り口で、商品を売るわけですけれど、資金が潤沢にない限り、すべての対象を満足させる、商品づくりや売り方は出来ません。なので、どこかのコップを一つだけ選んで、そこに集中して、水を溢れさせる。つまり、マーケットを限定して、その客層が満足できるものを提供して、そのマーケットの圧倒的なシェアをとることなんですね。そういう小さいところでのブレイクを作ることが後々「評判」となって、他のマーケットに対しても効果をあたえます。だから、まずは小さいところでもいいから、どこかでブレイクをさせてティッピングポイントを越えましょう、ということです。ーーー出典:http://www.akiradrive.com/takakura-hublot-2
ということで、マーケット内のとあるセグメントを「コップ」に例えて、そこに水を溢れされることで口コミが発生していくと説明をしています。
上記サイト中の図解が、視覚的にも理解を促進させてくれています。
続いて、かわんごさんの説明です。
基本的にヒットは相転移現象だから、ターゲットとなるユーザクラスタのほぼ100%に認知が広がると、極端に口コミが加速をはじめる。たとえユーザクラスタを限定しても本当に100%近くまで認知を広げることはとても難しいので、ユーザクラスタの限定方法がノウハウになる。まあ、でも、ネットユーザで特定ジャンルのホットエントリをほぼ毎日チェックしているアクティブユーザぐらいにまでクラスタを絞り込めば、100%近い認知もかなり現実的に狙えるはずだ。重要なのはどんなにクラスタを小さく限定していってもかまわないが、どこかのクラスタで認知度が100%近くにならないと、口コミの爆発はまずおこらない、ということと内部で情報交換されているクラスタを選ばないと単純にユーザを分類しただけになってしまうので口コミの媒体としては意味がないということだ。ーーー出展:http://d.hatena.ne.jp/kawango/20090520/1242780794
高倉さんの「コップ」の例えとは異なり、「ユーザクラスタ」と呼んでおり、社会学的にメカニズムを説明しています。とくにかわんごさんの説明で面白かったのは、つながりをもつ人間関係のクラスタを「口コミの媒体」と呼んでいる点です。
まとめると、お二方に共通するブレイクのポイントは、
・口コミを起こしたい一つ目のターゲットセグメントを特定すること
・そのターゲットセグメントの臨界点を超えるまで施策展開すること
※ターゲットセグメントはどれだけ小さくても構わない
です。
重要なのは、「臨界点を超えること」。ターゲットセグメントの特定については、限られたリソースでもきちんと臨界点を超えられるようなクラスターを選ぶことが大切になります。
また、SNSの拡散には「誰と誰がつながっているかの人間関係をあらわした相関図」を意味する「ソーシャルグラフ」の概念も知っておくと役立ちます。
ソーシャルグラフの概念は、情報発信の手段がひろがり、SNSの力が大きくなってきている現代では、必修科目といって良いくらいの超重要概念です。おすすめの本を紹介しておきます。SEOのリンクの概念理解も深まるので本当におすすめです。
4. キャッチーなフレーズを盛り込み、引用されビリティを高める
掲載先のタイトルにすぐ使えるような、キャッチーなフレーズを記事中にちりばめることで、「ここを引用したら面白い記事がつくれる」ことを示唆し、拡散を促すことができます。
例)
さらにポイントとして、太字にしたり文字色を変えること。流し読みでも面白い記事に仕上げることが、SNSという「暇つぶしのメディア視聴環境」に適しているからです。
この工夫をすることで、拡散時の投稿内容をより魅力的にするお手伝いができるので、CTRが高まって、一次波及からの流入数も増やせると思っています。
5. 小ネタを散りばめて、ツッコまれビリティを高めるむ
「引用されビリティ」にも近しいですが、小ネタを挟むことで、言及の数を増やせることもできます。
リマンべのこの記事でも、実際にツッコミの投稿もいくつか確認できました。
・記事冒頭のこども向けの新聞の書き方のマネ
・シメサバ駅のネタをはさむ
チリツモな施策ではありますが、メイントピックに反応しやすいクラスター以外のクラスタにもリーチさせやすくなるため、意外な波及を期待できます。2chなどのライトな層にもリーチさせやすくなると思います。
まとめ
以上をまとめますと、
1. 徹底的にタイトルとアイキャッチにこだわる
2. 世論の時流を読んでコンテンツを投下する
3. 拡散の重要クラスターにリーチする
4. キャッチーなフレーズを散りばめて、引用されビリティを高める
5. 小ネタを散りばめて、ツッコまれビリティを高める
となります。
SNSのバズのポイントは、Webの情報流通構造を制すること。
これは、Webでマーケティングに関わるなら、原理原則レベルの考えだと思っており、インフルエンサーマーケティングでもリスティング広告でもSEOでもアドテクでもなんでも応用できます。
プラットフォームのアルゴリズムと、そのプラットフォームでコンテンツを楽しんでいるユーザーの態度・テンション・期待を想像し、喜んでシェアしていただけるコンテンツをしっかりお届けすることです。
ニュースサイトやSNSを通じて、ウェブはどういう情報流通構造になっているのか、人はどのようなコンテンツだとシェアしてくれるのかを科学していくことは、なかなか楽しいですよ。
参考になれば幸いです。