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「顧客は誰で、どこにいるか」を知るのが、マーケティングのスタート。

順番は、WHO→WHAT→HOWです。

ユーザー理解(消費者理解)を通じて、ユーザーさんがどう思うか、どんな気持ちになるのかを推し量る「シミュレーション能力」を磨くことにもつながります。

マーケターはユーザー理解の専門家であるべし

尊敬するマーケター、森岡さんの言葉を借りると、

マーケターは「消費者目線」を基本にしないとアイデアも戦略も判断も全てにおいて焦点がズレると思うのです。

400時間ゲームに熱中することでファン目線を身につけた私には、原寸大のモンスターと自分自身が実際に向き合うこの感動の峻烈さが想像できたのです。だからこの企画は絶対に当たるという確信がありました。

と言うように、ユーザー理解はマーケの土台だと思っています。

(すごく良い記事のリンクも添えておきます)
【森岡毅氏インタビュー】USJ復活のカギは消費者目線の徹底(1) 

有名なフレームワーク「3C分析」の中でも、もっとも重要なものは消費者分析。すなわり消費者を理解すること。

ビジネスゴールを達成するために、マーケティングの成功確率を高める施策の示唆を得ることが、消費者理解の目的となります。

その商品を購買する、本質的な理由を知るのです。例えば、旅行やテーマパークなら来訪理由、サービスなら利用理由になるでしょうか。

変な例ですが、足に関する製品を全く扱っていない会社が、「ユーザーの足の親指の太さ」を知って、どう施策に活かせますか?意味がありませんよね。

提供しようと思っているものが実際には消費者にとっては価値がなかったり(購買の意思決定においてはどうでもよかったり)、あってもそれが消費者に伝わらなければ意味がありません。

精度を高め、再現性を高める

ユーザー理解はメリットしかありません。マーケティングのあらゆる局面での判断の拠り所になるからです。

・刺さるかどうか自分でも判断基準をもてるようになる
・SNSでバズりやすくなる
・SEOであれば検索意図の読み解きの広がり。最高のアンサーを提供できるようになれて上位表示しやすくなる
・CROであれば、ユーザーの言語世界を理解することにより、情報伝達の円滑化ができ、コンバージョンをとれやすい訴求やメッセージを生み出せる
・タッチポイントのその瞬間には、どんな感情が動いていて、どんな言葉を投げかけてあげると、動きやすくなってもらえるのかも想像しやすくなる
・どんな顔つきをしているのか、どんな風に笑うのか、どんな風に悲しむのか、どんなUIだったら操作しやすくなるのかなど、施策のシミュレーション能力を飛躍的に上げられる

など、良いこと尽くしです。

ユーザー理解は、積極的に投資すべき取り組みなのです。

今回は、古典的な定量調査・定性調査の手法ではなく、Web時代ならではの特性も考慮できるようなポイントをまとめて紹介してみたいと思います。

Webマーケティングにおけるユーザー理解のポイント

第一のポイントは、Webの特性を把握することです。

「一瞬の知覚」と「デバイス操作の環境」に分解できます。

1. 一瞬の知覚を捉える

ここで言いたいのは、「パッと見の見え方、感じ方」に敏感になりましょう、ということです。

Webはセルフサービスであり、思考のフォーカスが外部環境によって散ってしまうことがあります。そのため、マイクロモーメントでCTAを最適化して、プロセスを最後まで進んでいただけるようにすることが重要です。

一瞬で分からないものは、「関係ない情報」と処理されて、注目やタップしてもらえません。

また、遷移数が多そうに見えたり、アクセスしたサイトが重かったり、入力や操作がめんどくさく見えること、紛らわしく見えるものに対して、我慢強く操作を継続しようとは思わないものです。

私は、「ビール三杯理論」なる理論を勝手につくり、施策展開の際の頭の中のチェックポイントとして日々実践しています。

体感覚でのチェックリストを獲得できると、シミュレーションセンスをもっと磨き抜けるようになるのでおすすめです。

2. デバイス(主にはスマートフォン)を操作する姿勢を想像する

スマホを持ってる姿勢も想像することです。People Over Pixelsです。

前のめりなのか、ゆったりともたれかかっているのかでは、操作や視聴や情報探索行動の意欲やテンションが違うからです。
※リーンフォワード(Lean Forward)、リーンバック(Lean Back)とも言われています。

また、ディスプレイだけではなく、スマホならば、各タッチポイントにおける「外部のノイズ(集中遮断可能性)」も想像するようにしましょう。

さらにはそのモーメントでの生理反応も徹底的に観察・想像しましょう。

指の動きや目の動き、外見に現れる瞳孔の開き具合から鼻の穴の膨らみなど、体温や鼓動の変化など、生理的な変化も想像することで、「テンションが上がる施策になっているか」「ハードルが下がる施策になっているか」の脳内シミュレーションが捗るようになるからです。

ユーザー理解の三種の神器

ここからは、個人的に三種の神器だと思っているフレームワークやツールを紹介します。

「カスタマージャーニーマップ」と「コンバージョンファネル」と「CV濃度」です。

1. カスタマージャーニーマップ

タッチポイントから、マーケティングプランを策定するのに役立つのが、この「カスタマージャーニー」です。

購買に至るまでの各段階において、ユーザーは何を考え、感じ、行動しているのかを整理するフレームワークです。

ユーザー行動やユーザー心理、どの瞬間に痛みがあるか、喜びやテンションが上がる瞬間があるのかを整理して、マーケティングコミュニケーションや、メディアプランニングに活かしていけます。

購買においてのコミュニケーションフェーズ(ユーザーがどこの心理状態にいるか、カスタマージャーニー)を整理することで、このタッチポイントは気づきをあたえるフェーズか、刈り取りかなどを判断しやすくなります。

さらに時間軸を伸ばすと、ユーザーのライフストーリーになります。

少し話は脱線しますが、大ヒットしたアニメ映画『君の名は。』の監督・新海誠さんがTwitterで公開した、時系列と観客の感情グラフなんかもこれに近い考え方だと思われます。

<参考記事>
カスタマージャーニーマップを作成するメリットとは? MarkeZine編集部も実際に作ってみた

一番シンプルでわかりやすい「カスタマージャーニーマップ」の設計方法

英語ではこの記事がおすすめです。
Using A Customer Journey Map To Increase Sales (Includes Template)

2. コンバージョンファネル

サイトにランディングしてからコンバージョンに至るまでのボトルネックを解消していく、「治水工事」に役立つフレームワークです。

「バケツの穴を塞ぐように、コンバージョンに近いLPOやEFOからガンガン改善を回そう」

ですとか

「一覧ページから詳細ページへの遷移率をあげよう」

みたいに、コンバージョンに近づけるためのマーケティング施策を浮かべやすくなるものです。私はよく使います。

3. CV濃度グラフ

中心に顕在層を置き、そこからコンバージョンの遠い順に準顕在層、潜在層と、顧客の購買態度を整理して図示したものです。
※勝手にこう呼ぶようにしました。

顧客の購買への近さのグラデーションに名前をつけ、分類したものです。

「顕在層、準顕在層、潜在層」は、砕けて言うと「いますぐ、もうちょい、そのうち、まだまだ、全然」とも言えます。

例えば、facebook広告の類似オーディエンスの拡張なんかも、このイメージで考えています。

三種の神器の関係

面白い発見をしたので伝えたいのですが、この三種の神器は、「円錐で見る切り口によって変わる」良例だと思いました。

コンバージョンファネルを横に寝かせるとカスタマージャーニーに近しい機能になり、
コンバージョンファネルの円錐を下から覗くと、CV濃度グラフになります。

他にも、思考を整理してくれる便利ツールとして、以下のようなものもあります。

おまけ:共感マップ

共感マップはペインとゲインが真髄です。

ペルソナ作りに躍起になるより、共感マップをつくれるくらいのユーザー理解を深める活動の方が絶対的に施策に活きてくると思っています。

ユーザーをより良く理解するための共感図(Empathy Map)のデザインの仕方

おまけ2
コンセプトダイアグラムというものもあります。

おまけ3

微細な心の動きをラベリングできるようにしよう

ここでいう心とは、感情と欲求のことです。

私は、ウィキペディアなどで調べて、言葉のストックをよく増やすようにしていました。

感情の一覧を見てみると

安心、不安
感謝
驚愕、興奮、好奇心、性的好奇心
冷静、焦燥 (焦り)
不思議 (困惑)
幸福、幸運
リラックス、緊張
名誉、責任
尊敬
親近感 (親しみ)
憧憬 (憧れ)
欲望 (意欲)
恐怖
勇気
快、快感 (善行・徳に関して)
後悔
満足、不満
無念
嫌悪

軽蔑
嫉妬
罪悪感
殺意
シャーデンフロイデ
サウダージ
期待
優越感、劣等感

怨み
苦しみ
悲しみ、切なさ、感動
怒り
悩み(苦悩、懊悩、煩悶)
諦念 (諦め)
絶望、希望
憎悪(愛憎)
愛しさ
空虚

とあります。人の感情を動かすのが仕事であるマーケターとして、いろんな種類を引き出しに入れておきましょう。

また、このPlutchik(プルチック)という心理学者が考案した感情の分類法である「感情の輪」もおすすめです。

欲の種類はこちら。

ちなみに感情と欲は無数にあるのですが、繁殖本能と生存本能とで枝葉を作っていくと整理しやすいです。繁殖や生存において、どう機能している感情なのかと、感情の隠れた役割が推察できます。

SNSなら田端さんが提唱しているジャズ喫茶理論が有名ですね。

これらを学ぶことで、マーケティングコミュニケーションにおいて、「タッチポイントでのエモの捕捉」が可能になります。

感情の微細な揺れ動きのシミュレーション能力が高まることによって、適切なタイミングで適切なメッセージを打つことができるのです。買っていただくには、どういう風に今の感情を動かすと良いのかですね。

例えばコンプレックス商品とか、心臓が締め付けられるようなぎゅっとした感じまで想像して、そんな感情を抱いている人の態度変容や行動変容に効果的にアプローチできるようになります。

このあたりはニューロマーケティングと呼ばれる脳を解析する技術が進化していますが、シグナルを解析するにも仮説がないとビジネスに使える示唆は得られないので、いくらテクノロジーが発展しても、人間を見つめることからは逃げられません。

「ペルソナ」をもつな、ミューズをもて

私はペルソナの手法は好きではありません。

組織として共有認識を作るにあたっては有効な手法だと思うのですが、個人でやるべき施策ではないと思っています。日頃からユーザーのことを考えていれば、数多くのユーザーにお会いしていれば、こんな架空の人物像を仕立て上げなくてもわかるからです。

抽象的な存在を思い浮かべるよりも、具体で思い浮かべることです。解像度が圧倒的に違います。

「橋田壽賀子さんでも探せるサイトにしよう」とかですね。

これが決まれば、
「じゃあ、文字サイズは大きくしないと読めないかも」
「リンクはもっとリンクだとわかるようなUIにしよう」
「この専門用語だと伝わらなさそうだから、こう言い換えよう」
などと、おもてなしの設計アイデアが浮かんでくるはずです。

ペルソナは、あくまでも「組織でちぐはぐにならないようにする共通言語」として活用すべき手法だと思います。

宇多田ヒカルさんが言ったこと

以前に、このツイートが話題になりました。

NHK「SONGSスペシャル 宇多田ヒカル」でのインタビューの中での言葉です。

起業家の家入さんは

サービスやビジネスを作るとき、僕が大事にしているのは、「身近な人の顔を思い浮かべて、手紙を書くように作る」ということです。
出展:https://thefirstpenguin.jp/身近な誰か-に向けて-手紙を書くように-作るサービスのほうがいい-870e20578b9b

といいます。

また、ファッションデザイナーの中には、「あの人に着せたら、どんなに素敵になるんだろうな」と思い浮かべながら服を作る人もいるといいます。

このイメージ像は「ミューズ」と呼ばれ、ヘッドホンで音楽を聞いている人、手紙を書く相手も、同じようなことだと思うのです。

「これを○○に届けたい」がない人は、PDCAサイクルの螺旋階段の傾斜はゆるやかですし、スカスカでしょう。

デザイナー達は、次のコレクションの作品を作りだすために芸術に触れたり、旅に出たりなどして、インスピレーションを得ています。そして、それを具現化するためにイメージモデルとしてのミューズが存在します。そのミューズがどんなライフスタイルを送るのかをイメージし彼女がオフを過ごす時、旅に出る時、仕事をする時パーティーに出る時、あらゆるシーンを想定して作り上げていきます。そして、最後にマリエ(ウェディング)で締めくくります。
出展:https://ameblo.jp/instyleic/entry-10635191166.html

これらに共通するのは、届ける「相手」を具体で思い浮かべていること。つまり、ミューズが頭の中に存在しているのです。

抽象的にしか想像することができない空虚なペルソナよりも、たったひとりでも届けたい相手がいるのが、よっぽど強いと思います。

届けたい相手をイメージして言葉やディテールを磨き上げているからこそ、強烈に胸の奥底まで刺さるのだと思います。

WHOが明確に決まっているからWHATも明確になり、だからこそマーケの施策の最後の決め手のHOWに磨きがかかるのです。最後の最後のディテールへの執念を生むのです。

ユーザーへの想像力の欠如は、施策の失敗のもと

マーケティングの実践の場でもよくあるのですが、施策がずっとうまくいかない人は、だいたいこの届けたい相手の想像が足りなかったりするのです。

元USJの森岡さんは、モンハンをプレイしていたりします。

想像力が足りないのは、圧倒的に情報量と思考量が足りていない証拠。追体験できないなら、それをなりきる理解が足りないという証拠。

そのために、

「恐山のイタコになれ」
「ユーザー憑依できるくらい理解しろ」
「同じ痛みや感情が出るようにしろ」
「ミーハーに、まずは自分でもやってみろ」
「どうやったら伝わるかわからなかったら、なりきれ、疑似体験しろ」
「第三の眼といてユーザーの眼を持て」

ということだと思います。

「ユーザー理解(わかる)」からの「ユーザー視点獲得(なりきる)」はマスト。

ニーズをとらえ、インサイトの獲得するためにも、ユーザーさんにどんどん会いましょう。同じ痛み悲しみ喜びを知りましょう。

ユーザー理解においては『インサイト』などの名著はありますが、結局は実際にユーザーさんと向き合うことでしか学べないと思っています。

ユーザー理解はマーケの土台。土台から固めていきましょう。

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